Windows の解像度に思うこと
画素の密度
Apple が iPhone 4 向けに Retina ディスプレイを発表して以降、スマートフォン向けのディスプレイは高密度化し続け、その傾向はラップトップ PC やテレビにおいても同様である。しかし macOS のスケーリングは比較的綺麗に見える一方 Windows では従来のアプリケーションは UI がガタついたり、表示がボケボケになってしまう。
最新の MacBook Pro がフルサイズの USB ポートを廃止した事からも分かるように Apple は古い物を切り捨てる事に躊躇が無い。一方で Microsoft は ( サティア・ナデラの就任以降その傾向は変わりつつ有るものの ) 比較的後方互換性を重視する傾向にある。そのため、新しい高解像度環境において Windows では古いアプリケーションの表示に問題が発生してしまうのである。勿論、新しい開発環境で作成されたアプリケーションではスケーリングがほぼ上手く行われる。 Windows 10 では 25% 刻み 4 の倍数単位でスケーリングが行われるため Windows アプリ UX デザイン ガイドライン においても 4x4 のピクセルグリッドにデザインをスナップするようにと書かれている。
Windows でのアプリケーション側での対応については以下の記事に詳しい。
- 【4K修行僧】Windowsの4Kスケーリング環境を検証する ~文字表示は美麗。ただし、非対応アプリも多数存在 - PC Watch
- アプリの高DPI(High DPI)対応について 第2回 ~ アプリケーションの高DPIへの対応レベル ~ – 田中達彦のブログ
- WPF での高 DPI 対応 | grabacr.nét
- Windows 8.1 で加わった Per-Monitor DPI と WPF での対応方法 | grabacr.nét
しかしながら、結局の所 Windows では従来型の古いアプリケーションに有用な物が多く、その多くはバグフィックス等のメンテナンスは行われているものの UI を完全に刷新する程の対応が行われている物は殆ど無い。そのため、従来型のアプリケーションをピクセルパーフェクトにスケーリングするため 200% 表示に最適化されたディスプレイを搭載する事のアドバンテージが極めて大きい。
Microsoft もその問題を認識しているのか Surface Pro 4 や Surface Book の解像度は 200% スケーリングに最適な解像度になっている。
機種 | size | x | y | DPI |
---|---|---|---|---|
Surface Pro 4 | 12.3 | 2736 | 1824 | 267 |
Surface Book with Performance Base | 13.5 | 3000 | 2000 | 267 |
MacBook Pro (2016) | 15.4 | 2880 | 1800 | 220 |
EV2116W-A | 21.5 | 1920 | 1080 | 102 |
EV2451 | 23.8 | 1920 | 1080 | 92 |
古式ゆかしいコンピュータ用ディスプレイにおいては 72DPI または 96DPI がデファクトスタンダードとされてきた 。これはデスクトップ環境での利用を想定した数値であるから、より目に近い距離で使用されるラップトップ PC やタブレットにおいてはより高密度が好適である。現行の Surface デバイスの DPI は 267 であるから、 200% スケーリング環境では実質的なコンテンツの表示領域は 133.5DPI 相当となる。 Surface デバイスはラップトップ PC とタブレットを兼ねる 2-in-1 デバイスとしてのセグメントに属するので、その DPI もラップトップ PC とタブレットの中間であると考えられる。
現行のデスクトップ環境向けのディスプレイの解像度は 96DPI 前後が主流である事から、以下のようなディスプレイが望ましいと考える。
セグメント | DPI |
---|---|
デスクトップ | 192 |
ラップトップ | 240 |
タブレット | 288 |
アスペクト比
PC のディスプレイのアスペクト比は時代と共に 4:3 、 5:4 、16:10 、 16:9 とそのメインストリームの軸足を移してきた。一方で Surface シリーズはアスペクト比 3:2 を採用している。
x | y | アスペクト比 |
---|---|---|
640 | 480 | 4:3 |
800 | 600 | 4:3 |
1024 | 768 | 4:3 |
1280 | 1024 | 5:4 |
1280 | 720 | 16:9 |
1366 | 768 | 約16:9 |
2736 | 1824 | 3:2 |
3000 | 2000 | 3:2 |
PC 向けのディスプレイにおいて 16:9 が一期に普及した背景には、動画コンテンツの多くが視界全体の大きさを意識してそのサイズを採用した事にある。そのため PC で画面一杯に動画コンテンツを表示出来るようにするため、 PC においてワイドディスプレイが普及してきた初期に多かった 16:10 のアスペクト比が一気に駆逐されていった、という歴史的経緯がある。
一方で、縦に長いコンテンツを消費する事の多い PC においては縦の解像度のアドバンテージを支持する声も多く、 Surface シリーズのアスペクト比が 3:2 である事は、それらの揺り戻しであるとも言える。
デスクトップ PC においては、非常にワイドなコンテンツを表示したり、あるいはコンテンツを並べて表示する事に適した 21:9 の解像度を推す声もある。
私は、 3:2 の解像度は好ましいと考えるし、より小さなアスペクト比を採用し、また縦の値を共通化するという意味で、デスクトップ環境において 5:2 のアスペクト比もありなのではないか、と思う。
以下の表の x 及び y は既存の解像度と比較しやすくするため、半分の値にしている。
x | y | DPI | size | アスペクト比 |
---|---|---|---|---|
1260 | 840 | 240 | 12.6 | 3:2 |
1260 | 840 | 264 | 11.4 | 3:2 |
1260 | 840 | 288 | 10.5 | 3:2 |
1344 | 896 | 240 | 13.5 | 3:2 |
1344 | 896 | 264 | 12.2 | 3:2 |
1344 | 896 | 288 | 11.2 | 3:2 |
1440 | 960 | 240 | 14.4 | 3:2 |
1440 | 960 | 264 | 13.1 | 3:2 |
1440 | 960 | 288 | 12.0 | 3:2 |
1536 | 1024 | 240 | 15.4 | 3:2 |
1536 | 1024 | 264 | 14.0 | 3:2 |
1536 | 1024 | 288 | 12.8 | 3:2 |
x | y | DPI | size | アスペクト比 |
---|---|---|---|---|
2560 | 1024 | 192 | 28.7 | 5:2 |
2560 | 1024 | 216 | 25.5 | 5:2 |
2560 | 1024 | 240 | 23.0 | 5:2 |
1920 | 1280 | 192 | 24.0 | 3:2 |
1920 | 1280 | 216 | 21.4 | 3:2 |
1920 | 1280 | 240 | 19.2 | 3:2 |
3200 | 1280 | 192 | 35.9 | 5:2 |
3200 | 1280 | 216 | 31.9 | 5:2 |
3200 | 1280 | 240 | 28.7 | 5:2 |
2160 | 1440 | 192 | 27.0 | 3:2 |
2160 | 1440 | 216 | 24.0 | 3:2 |
2160 | 1440 | 240 | 21.6 | 3:2 |
3600 | 1440 | 192 | 40.4 | 5:2 |
3600 | 1440 | 216 | 35.9 | 5:2 |
3600 | 1440 | 240 | 32.3 | 5:2 |
5:2 のアスペクト比は昔の 5:4 のディスプレイを 2 枚並べた比率に相当する。意外とありなのではなかろうか?